拝啓ドッペルゲンガー

小説
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「めっちゃ宿題出たね」

「ほんとそれ」

「終わる気がしないわ」

放課後、私のクラスメート達と話をしている。今日出た課題についてだ。

物理の課題だが、私はとても物理が苦手なこともあってか、憂鬱でしか無かった。

今日は木曜日で、提出は週明け。

でも終わる気がしない。

紗季さき、物理苦手なんでしょ?大丈夫?」

親友の相浦あいうらゆうなが、笑いながら聞いてくる。

「できるわけないでしょ」

物理が得意なゆうなに笑い返した。

「もう1人の自分がいて、全てをやってくれないかなぁ」

何気ないこの一言が私の人生を大きく変える事になるなんて、この時は思ってもいなかったんだ…

土曜日

やばい、本当に分からない。

案の定全く進んでいない。もういっその事真っ白で提出してやろうか。そんな考えが頭をよぎるが、流石にそんな事は出来るはずが無い。

その時だった。

夜の暗い空の中、一瞬何かがピカッと光った。

「雷!?」

いや、今は11月だ。雷が鳴るなんてことはほぼないだろう。

恐る恐る窓の方に目をやると、人の形をした影が見えた。

「ヒエッ」

小さい悲鳴を上げる。

まさか…泥棒!?

ゆっくり影に近づくと、その顔が明らかになってくる。

そこには…

私と全く同じ顔立ちの人がいた。

もはや、私の”分身”と言っても過言ではない。顔から容姿まで、全てが”私”なのだ。

目をこすって見てみても、それが幻覚でない事を伝えるかのように何も変わらない。

一体誰なのか声をかけたいが、緊張しているのか声が喉で止まってしまう。

その時、私の分身がゆっくり口を開き、小さいけどはっきりとした声で言った。

「どうもこんにちは君の分身です」

分身

え…?

私の、分身…?

これって、ドッペルゲンガーってやつ?

「どういうこと…??」

声が震えているのが自分でも分かった。

「もう一人自分がいたら、って言ったよね?そんな願いがボクを呼んだんだ」

えっ…

言われてみれば、木曜日の放課後にそんなことを言っていた。

「ねえ、何故ここに来たの…?」

「簡単じゃん」

私の分身が即答する。

「なんでもやるよ、ボクは君の分身だからね」

私の分身は、含み笑いでそう答える。

「君は…誰なの?」

「ふふっ。誰って言われても、ボクは君だよ」

「・・・」

意味がよくわからないような答えを返されて絶句する私を見た分身は、またにやりと笑う。

「ま、そんなことはどうでもいい。物理の課題やっちゃうね」

「え?…あ、ありがとう」

存在

それ以来、私はたくさんの事を私の分身に任せるようになった。

何かを頼んでも、分身は「しょうがないなあ笑」と言いながら何でもやってくれる。

しかし、その生活を続けて数週間経った、月曜日。何かの”違和感”を感じていた。

自分の周りの人たちが、何か違う…

そして、私自身も何か変わってる…

なんだろう、この、私だけが置いて行かれているような感じ…

…なぜ?

私が望んでいた世界だと思ったのに…

完璧だと思ってたのに…

私は、誰なんだろう…。

もう、無理だ…

私の理解者が誰もいないなんて、私には耐えられない。

帰宅してから、震えた声で、分身に言った。

「ねえ、私の存在を返して」

それを聞いた分身はほくそ笑む。

「生憎だけどボクもこっちのほうが随分居心地がよくてね。もう君の居場所はないんだってわかってるんでしょ?」

「…」

「色々やってほしいって言われたからやってるのに、今更返してほしいなんてそんな都合のいい話が通ると思う?」

「それは…」

言葉を詰まらせる私を前に、分身は狂気じみた声で続ける。

「奪われたんなら奪えばいいだろ?今度はお前の番だから」

あっ…

そうだ。

これは、元は自分が蒔いた種だったんだ。

嫌でもこの状況を理解した。

気づくと、涙が零れ落ちていた。

だれか…この涙を止めてくれるような人が来てくれれば…

入れ替わり

分身ドッペルゲンガーって、見たら死ぬんじゃなくて、入れ替わるんだね。

最初に分身と会った時、なんでこんなにも単純なことを考えられなかったんだろう。

「やっと理解できたみたいだね、お前がこれからどうするべきなのか」

分身は、相変わらずの含み笑いで言う。

「…」

何も答えない私に、分身は耳元で囁いた。

「ボクがちゃんと君を生きてあげるから、君も次の誰かを救わなくちゃ。」

「次の誰か…」

「もう何をすればいいか分かってんだろ」

もう…私が私になることはできないんだ…

私が分身になって、、、

他の誰かを助けなきゃ。

決断したときには、もう家を飛び出ていた。

助けを求めてる人を探すんだ。

君の

「もう一人の俺が居て、全てをやってくれないかな…」

やることが多すぎてもう萎えてしまった俺は、思わず口に出して呟いていた。

その時だった。

窓の外が突然光ったのだ。

「何だ、雷か!?」

いや、12月に雷なんて聞いたことがない。

急いで窓に近づくと、そこには影が…

小さな歩幅でもっと近づいてみると、影の主は言った。

「どうもこんにちは君の分身です」

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